電気工事と配線工事の基礎
配線工事は、電源を安全に各部屋へ届けるための道筋づくりです。照明やコンセントを増やしたい、Wi-Fiルーターの位置を変えたい、エアコン専用回路を設けたい――こうした要望はすべて配線計画から始まります。見た目や使い勝手だけでなく、ブレーカー容量や保護装置の選定も同時に考えることで、将来の増設にも強い住まいになります。
新設配線と増設配線の違い
新設は間取り変更やリフォーム時に配線ルートをゼロから組み立てる作業、増設は既存回路に新しい支線や機器を足す作業です。増設でも負荷計算が甘いと頻繁な遮断や発熱を招くため、専用回路が必要な家電(IH、エアコン、EV充電器など)は最初から分けるのが安心です。
隠ぺい配線と露出配線の選び方
壁内に通す隠ぺい配線は見た目がすっきりしますが、開口や復旧の手間が増えます。露出配線はモールで保護し短工期で低コストにできます。生活動線や内装の仕上がり、工期と予算のバランスで最適解を決めましょう。
計画と見積もりのポイント
配線は“今の不便”だけで決めると後悔しやすい分野です。家電の買い替え、在宅ワークの増加、子どもの成長など生活の変化を想定し、数年先を見据えた回路設計をプロと一緒に作ると、無駄な再工事を防げます。
回路設計と容量の考え方
・専用回路:エアコン、電子レンジ、洗濯乾燥機、EV充電は原則専用に
・分散配置:同じ部屋でも回路を分け、同時使用時の電圧降下を抑える
・アースと漏電保護:水回りや金属筐体の機器は必ず接地と保護器を確認
配線ルートと材料選定
天井裏や床下の通りやすさ、耐火区画の貫通処理、屋外配線の耐候性を事前に確認します。ケーブルは太さだけでなく許容電流や敷設環境に適した種類を選定し、将来の張り替えに備えて予備の通線管を用意すると保守が楽になります。
見積書で見るべき内訳
基本料金、出張費、回路数ごとの作業費、ケーブル・器具代、開口復旧、廃材処分、保証の記載をチェックします。図面や施工前後の写真提出、機器ごとの負荷計算が添付されていると、説明責任が明確で安心です。
施工当日の流れとトラブル回避
工事前に家具移動や養生の範囲を決め、停電時間を共有しておくとスムーズです。業者は通線→接続→絶縁・導通・漏電試験→動作確認→復旧の順で進めます。写真とチェックリストで進捗を見える化すると品質が安定します。
当日の段取り
・停電時間と影響機器(冷蔵庫、ネット、監視カメラ)を事前通知
・養生と開口位置の合意、騒音・粉じん対策の説明
・試験結果と回路表をその場で共有し、ラベルを貼付
追加工事が出やすいケース
壁内での下地干渉、既存配線の劣化、耐火区画の補修義務、想定外の経路閉塞は工数増の典型です。事前調査で“上限見積り”を提示してもらえると、金額のブレを抑えられます。
引き渡し後のチェック
分電盤の回路表、アースの有無、写真と保証書を保管します。数週間は発熱や異音、ブレーカー動作を観察し、気になる点は早めに相談しましょう。連絡先を一つに集約しておくと、万一の停電時にも迅速に対応できます。